労働条件通知書の試用期間記載は必要?書き方のポイントと記載例を解説

掲載日: 2026-08-09
労働条件通知書の試用期間記載は必要?書き方のポイントと記載例を解説

試用期間を設ける企業は多いものの、「労働条件通知書に試用期間を記載する義務はあるのか」「どこまで記載すればよいのか」と悩む人事・労務担当者は少なくありません。試用期間の内容が曖昧なまま採用を進めると、本採用の可否や給与、試用期間の延長などを巡って、従業員との認識の違いからトラブルに発展する可能性があります。

本記事では、労働条件通知書における試用期間の記載義務や記載しない場合のリスク、記載すべき項目と書き方のポイント、実際に使える記載例まで分かりやすく解説します。アルバイトやパートの取り扱いや、よくある質問についても紹介していますので、労働条件通知書を適切に作成したい方はぜひ参考にしてください。

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労働条件通知書に試用期間の記載は必要?

労働条件通知書において、試用期間そのものを項目として記載することが法律で一律に義務付けられているわけではありません。ただし、試用期間を設ける場合は、期間や待遇、本採用の判断条件などを明記しておくことが重要です。記載がないと、従業員との認識違いや給与・本採用をめぐるトラブルにつながる可能性があります。

また、厚生労働省が公開している労働条件通知書のモデル様式にも、「試用期間を設ける場合には、その旨を明示しましょう」と案内されています。これは、入社時点で労使双方の認識をそろえ、後のトラブルを防ぐためです。法的義務の有無にかかわらず、実務上は試用期間の内容を明確に記載しておくことが大切です。

出典:厚生労働省 都道府県労働局「モデル労働条件通知書(記入上の注意)」

試用期間を記載しない場合のリスク

試用期間について労働条件通知書に記載しない場合、企業と従業員の認識に食い違いが生じ、労務トラブルへ発展する可能性があります。特に起こりやすいトラブルは、以下の3つです。

  • 本採用への認識違いによるトラブル:試用期間があることを認識しておらず、本採用の判断を巡って争いになる。
  • 試用期間中の給与に関する争い:試用期間中の給与や待遇の違いが明示されておらず、未払い賃金などの問題に発展する。
  • 試用期間延長の承諾拒否問題:延長の可能性や条件を記載していないため、従業員から延長の同意を得られない。

これらのリスクを防ぐためにも、試用期間に関する条件は労働条件通知書へ具体的に記載し、入社時に十分な説明を行うことが重要です。

本採用への認識違いによるトラブル

試用期間について労働条件通知書に記載していない場合、従業員が「最初から本採用で入社した」と認識し、後にトラブルへ発展する可能性があります。たとえば、企業側は試用期間中の評価を踏まえて本採用の可否を判断する予定であっても、その前提が共有されていなければ、本採用に至らなかった際に「一方的に解雇された」と受け止めるおそれがあります。こうした認識の違いは、企業への不信感や労使トラブルにつながりかねません。

また、試用期間中であっても、勤務開始から14日を超えた従業員を解雇する場合は、原則として30日前までの解雇予告、または解雇予告手当の支払いが必要です。これは、労働基準法第20条で定められています。そのため、「試用期間中であれば自由に本採用しないと判断できる」と考えるのは適切ではありません。

こうしたトラブルを防ぐためにも、労働条件通知書には試用期間の有無や期間を明記し、本採用の判断基準についても入社時に丁寧に説明しておくことが重要です。

出典:厚生労働省(労働基準法第20条・第21条)

試用期間中の給与に関する争い

試用期間中の給与について労働条件通知書に明記していない場合、企業と従業員の認識に齟齬が生じ、賃金を巡るトラブルへ発展する可能性があります。たとえば、募集要項には月給25万円と記載されていたにもかかわらず、試用期間中のみ23万円を支給した場合、その条件が事前に明示されていなければ、従業員は「募集内容と異なる」と感じ、不信感を抱くおそれがあります。また、「試用期間中も本採用後と同じ給与が支給されると思っていた」と認識しているケースでは、未払い賃金を請求されるなどの労使トラブルにつながる可能性もあります。

特に、募集要項と労働条件通知書の内容に差異がある場合は、入社前にその理由を説明し、試用期間中の基本給や各種手当、待遇の違いを明確にしておくことが重要です。試用期間中に給与を変更する場合は、その金額や適用期間を労働条件通知書へ具体的に記載し、事前に十分な説明を行うことで、給与をめぐるトラブルを防ぎやすくなります。

募集要項の必須項目や作成時のポイント、求人票の役割や記載事項については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ合わせてご覧ください。

募集要項とは?必須項目と作成ポイント、正しい書き方まで解説

求人票とは?役割や記載事項、書き方のコツまで解説

試用期間延長の承諾拒否問題

試用期間を延長する可能性があるにもかかわらず、その旨を労働条件通知書や雇用契約書に記載していない場合、延長を提案しても従業員から承諾を得られず、トラブルに発展する可能性があります。たとえば、試用期間の満了直前になって「もう3か月延長したい」と伝えても、従業員から「そのような説明は受けていない」「当初の予定どおり本採用されるものと考えていた」と反発されるケースがあります。その結果、延長を拒否して退職を選択したり、企業への不信感から労使トラブルに発展したりすることも少なくありません。

こうした事態を防ぐためには、試用期間を延長する可能性がある場合はその旨を事前に労働条件通知書へ明記しておくことが重要です。あわせて、延長の可能性だけでなく、延長を検討する理由や最大延長期間についても記載しておくと従業員の理解を得やすくなります。実際に延長を提案する際は、能力や勤務状況など延長が必要となる具体的な理由を丁寧に説明し、今後の評価基準や延長後の期間についても明確に伝えることで納得感のある対応につながります。

試用期間の記載項目と書き方のポイント

試用期間を設ける場合は、労働条件通知書に必要な情報を明確に記載し、従業員との認識の違いを防ぐことが重要です。特に、本採用後との条件が異なる場合は、事前に書面で共有しておくことでトラブルの防止につながります。記載しておきたい主な項目は、以下の4つです。

  • 試用期間の長さ:開始日・終了日を含めて具体的に記載する
  • 試用期間中の給与:本採用後と異なる場合は支給額や条件を明記する
  • 本採用の判断条件:勤務態度や能力など、評価の基準を示す
  • 延長の可能性:延長する場合の条件や最大延長期間を記載する


これらの項目を明確にしておくことで、従業員が安心して勤務を開始できるだけでなく、企業側も試用期間を適切に運用しやすくなります。

なお、労働条件通知書を作成する際は、試用期間以外の労働条件についても正確に記載する必要があります。変形労働時間制を採用しているにもかかわらず記載なしだと、従業員との認識の相違やトラブルにつながる可能性があるため注意しましょう。

試用期間の長さ

試用期間の長さについて、法律上明確な上限は定められていません。ただし、実務上は3〜6か月程度に設定されることが多く、長くても1年程度を目安にするケースが一般的です。業務内容や求めるスキル、教育期間などを踏まえて適切な期間を設定します。また、労働条件通知書には「入社日から6か月間」と記載するだけでなく、開始日と終了日も具体的に示すことで、企業と従業員の認識の違いを防ぎやすくなります。

記載例は、以下の通りです。

試用期間:2026年4月1日から2026年9月30日まで(6か月間)

このように期間を明確に記載することで、試用期間の満了日が分かりやすくなり、後のトラブル防止にもつながります。また、試用期間中と本採用後で労働条件が異なる場合は、その内容も併せて明記しておくことが重要です。

試用期間中の給与

試用期間中の給与は、本採用後と同額に設定することも、一定の範囲で異なる金額を設定することも可能です。ただし、本採用後と給与や手当などの条件が異なる場合は、労働条件通知書にその内容を明確に記載しておくことが重要です。金額や適用期間を具体的に示しておくことで、入社後の認識の違いや賃金を巡るトラブルを防ぎやすくなります。

また、試用期間中であっても最低賃金以上の賃金を支払うことが原則です。ただし、都道府県労働局長の許可を受けた場合には、最低賃金の減額特例制度を利用できます。この制度では、都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、一定の範囲で最低賃金の減額が認められることがあります。対象期間や減額率には上限があるため、利用を検討する際は事前に要件を確認することが重要です。

記載例は、以下の通りです。

基本給:月給250,000円
ただし、試用期間(2026年4月1日~2026年9月30日)は月給230,000円とする。

このように、本採用後の給与と試用期間中の給与を区別して記載すると、従業員にも分かりやすくなります。また、住宅手当や賞与などの待遇に違いがある場合も、あわせて明記しておくことで、より透明性の高い労働条件通知書となります。さらに、雇用契約書で試用期間中の給与を定める場合にも労働条件通知書と内容を一致させ、金額や適用期間を明確に記載する必要があります。

本採用の判断条件

本採用の判断条件には、試用期間後にどのような基準で本採用の可否を判断するのかを記載します。あらかじめ評価基準を示しておくことで、従業員との認識の違いを防ぎ、本採用を見送る場合にも企業側の判断根拠を説明しやすくなります。評価項目について法律上の明確な定めはありませんが、一般的には勤務態度、業務遂行能力、勤務成績、勤怠状況などを総合的に判断するケースが多く見られます。

記載例は、以下の通りです。

試用期間中の勤務態度、業務遂行能力、勤務成績、勤怠状況などを総合的に評価したうえで、本採用の可否を判断します。

評価基準はできるだけ具体的に記載することが重要ですが、「勤務態度が良好であること」のような抽象的な表現だけでは後にトラブルとなる可能性があります。そのため、勤務態度や能力、適性など複数の評価項目を組み合わせて記載するとともに、試用期間中の評価内容や指導経過を記録しておくことで、本採用の判断について客観的に説明しやすくなります。

延長の可能性

試用期間を延長する可能性がある場合は、その旨を労働条件通知書にあらかじめ記載しておくことが重要です。事前の記載がないまま延長を提案すると、従業員から承諾を得られず、労使トラブルにつながる可能性があります。延長は、長期欠勤や勤務日数の不足により評価に必要な情報が十分に得られない場合、業務遂行能力や勤務態度を継続して確認する必要がある場合など、合理的な理由がある場合に限って検討することが望ましいでしょう。

また、試用期間の延長期間について法律上明確な上限が定められているわけではありません。ただし、長すぎる試用期間は従業員に不安を与える可能性があるため、当初の試用期間と合わせて1年程度を一つの目安に設定するのが望ましいでしょう。延長する可能性がある場合は、判断基準だけでなく、最大延長期間もあわせて記載しておくと、従業員の理解を得やすくなります。

記載例は、以下の通りです。

試用期間中の勤務状況、業務遂行能力、健康状態などを総合的に判断し、必要があると認めた場合は、試用期間を最大3か月延長することがあります。

このように、延長の条件と期間を具体的に明記することで、後から一方的に条件を変更したと受け取られるリスクを軽減し、適切な試用期間の運用につながります。

試用期間の記載例

労働条件通知書に試用期間を記載する際は、従業員との認識の違いを防ぐためにも内容をできるだけ具体的に明記することが重要です。特に「試用期間の長さ」「試用期間中の賃金」「本採用の判断条件」「延長の可能性」の4項目は、あらかじめ記載しておくことで採用後のトラブルを防ぎやすくなります。抽象的な表現ではなく、期間や条件を明確に示すことが求められます。

以下は、労働条件通知書における試用期間の記載例です。雇用契約書を作成する場合も、試用期間に関する記載内容は基本的に共通するため、記載例として参考にしてください。

  • 試用期間の長さ

 令和○年○月○日から令和○年○月○日までの3か月間を試用期間とする。

  • 試用期間中の賃金

 基本給は月給250,000円とする。ただし、試用期間中の基本給は月給230,000円とする。

  • 本採用の判断条件

 試用期間中の勤務態度、業務遂行能力、勤怠状況、業務への適性などを総合的に評価し、本採用の可否を決定する。

  • 延長の可能性

 試用期間中の勤務状況や業務習熟度などを総合的に判断し、必要があると認めた場合は、試用期間を最大3か月延長することがある。

このように、各項目を具体的に記載しておくことで、企業と従業員の双方が試用期間の内容を正しく理解しやすくなります。また、試用期間中の待遇や本採用の判断基準、延長の条件を事前に共有できるため、採用後の認識の相違や労務トラブルの防止にもつながります。

アルバイトやパートの試用期間の記載義務

アルバイトやパートに試用期間を設ける場合も、正社員と同様に試用期間の内容を労働条件通知書へ明記しておくことが重要です。雇用形態が異なることを理由に試用期間の内容を曖昧にしたまま採用すると、後から「試用期間があるとは聞いていなかった」「給与が違う」といった認識の違いからトラブルへ発展する可能性があります。

労働条件通知書には、試用期間の長さや試用期間中の給与、本採用の判断基準、延長の可能性などを具体的に記載し、正社員と同様に労働条件を明確に示すことが望ましいです。アルバイトやパートの試用期間は1〜3か月程度に設定されることが一般的ですが、自社の業務内容や教育期間に応じて適切な期間を設定することが大切です。


また、書面で明示するだけでなく、入社時に試用期間の目的や適用条件、待遇について口頭でも丁寧に説明することが重要です。書面と口頭の両方で内容を共有することで、従業員の理解を深められるだけでなく、企業と従業員双方の認識のずれを防ぎ、安心して勤務を開始できる環境づくりにつながります。

まとめ

試用期間は、採用した従業員の適性や能力を確認し、本採用の可否を判断するための重要な期間です。試用期間の記載は法律で一律に義務付けられているわけではありませんが、労使間の認識の違いを防ぐためにも労働条件通知書へ明記しておくことが重要です。

記載する際は、試用期間の長さだけでなく、試用期間中の給与、本採用の判断条件、延長の可能性なども具体的に示しましょう。あらかじめ労働条件を明確にしておくことで、給与や本採用、試用期間の延長をめぐるトラブルを防ぎやすくなります。また、アルバイトやパートを含め、雇用形態にかかわらず書面で明示するとともに、口頭でも丁寧に説明することが大切です。労働条件通知書を適切に作成・運用し、労使双方が安心して雇用関係を築ける環境を整えましょう。

よくある質問

試用期間中に労働条件通知書をもらっていなかったら退職できますか?

試用期間中であっても、労働条件通知書を受け取っていないことを理由に、退職できなくなるわけではありません。むしろ、企業側が労働条件通知書の交付義務に違反している可能性があります。退職については、期間の定めのない雇用契約では、原則として民法に基づき退職の申し出から2週間で退職できます。ただし、就業規則で「退職は1か月前までに申し出る」と定められている場合は、円満退職のためにも可能な限り従うことが望ましいでしょう。また、労働条件通知書が交付されていない場合は、会社へ交付を求めることができます。応じてもらえない場合は、ハローワークや労働基準監督署などの公的機関へ相談する際の根拠にもなります。

試用期間中にクビになる条件は?

試用期間中であっても、会社が自由に解雇できるわけではありません。試用期間中の解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限り認められます。具体的には、勤務態度や協調性の著しい不良、重大な経歴詐称、指導を行っても改善が見込めない深刻な能力不足、業務遂行が困難な状態が続いている場合などが挙げられます。また、入社後14日を超えて解雇する場合は、30日前の解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要です。不当解雇が疑われる場合は、会社へ解雇理由証明書の発行を求め、必要に応じて厚生労働省の総合労働相談コーナーなどへ相談しましょう。

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