採用動画の制作を外注するか検討している採用担当者に向けて、費用相場と内訳、制作会社の選び方、外注と内製の判断基準をまとめました。金額を左右するのは動画の種類と撮影の規模ですが、発注後に困りやすいのは見積書に出てこない著作権の扱いです。発注前に決めておくことがわかる状態を目指します。
採用動画制作の進め方|外注と内製の2つの選択肢
採用動画の制作方法は外注と内製の2つで、判断の分かれ目は「企画と映像表現が品質を左右する動画かどうか」です。コンセプトムービーや会社紹介動画のように、構成と演出でメッセージが決まる型は外注が向きます。社員インタビューや座談会のように、話す内容そのものが主役になる型は内製でも成立します。
もう1つの判断材料は、公開までの期限です。外注は企画から納品まで複数回の確認を挟むため、出演者の日程調整を含めると数週間から数か月かかります。採用イベントの日程が決まっていて期限が動かせない場合は、間に合う範囲を内製し、翌年度に外注する分け方もあります。採用動画の効果や種類ごとの使い分けは「採用動画の効果と作り方|種類別の活用シーンと2026年のトレンドを解説」で扱っています。
採用動画制作の費用相場
採用動画制作の費用は、動画の種類と撮影の規模でおおよその幅が決まります。公開されている料金情報をもとに、種類別の相場帯と金額を左右する要因を整理しました。
| 動画の種類 | 外注時の費用の目安 | 金額を左右する主な要因 | この予算帯で先に決めること |
|---|---|---|---|
| 対談・Q&A形式(ショート含む) | 10万〜50万円 | 撮影本数、編集の簡素さ | 1回の撮影で何本撮るか |
| 社員インタビュー | 30万〜80万円 | 出演者の人数、撮影場所の数 | 誰に、何を聞くか |
| 密着・ドキュメンタリー | 40万〜120万円 | 撮影日数、同行の有無 | どの職種の1日を追うか |
| 会社紹介 | 50万〜120万円 | 図解・CGの有無、ナレーション | 説明会のどの場面で流すか |
| コンセプトムービー・ブランドムービー | 公表相場の幅が大きい | 企画の作り込み、演出の規模 | 何を伝える動画にするか |
出典:「採用動画の費用相場|種類別の料金と予算別の始め方」(株式会社StokedBase/同社サイト・2026年9月9日取得)。金額は同社が公開している相場帯で、個別の見積もりとは異なります。コンセプトムービー・ブランドムービーは企画と演出の作り込み幅が大きく、同じ名称でも見積もりが大きく変わるため、相場帯としては示していません。「金額を左右する主な要因」以降はABABAが整理した項目です。
費用を決めるのは動画の種類だけではありません。同じ出典では、目的(認知拡大・面接辞退防止・ミスマッチ防止)、尺と本数、依頼先(自社内製・フリーランス・制作会社)の3点が費用を左右するとされています。相場表は上限だけを見ず、自社が何人・何か所・何本で作るかを先に決めてから当てはめてください。
費用の内訳(企画費・撮影費・編集費)
採用動画制作の見積書は、ディレクション費・企画費・撮影費・編集費に分かれるのが一般的です。このうち撮影費と編集費は、出演者の人数、撮影場所の数、編集の作り込み度合いで変わります。見積書を読むときは、金額の合計より先に、次の4点が明記されているかを確認します。
- 修正の回数:初稿から何回まで無償で直せるか。追加分の単価はいくらか
- 撮影日数と撮影時間:延長した場合の扱いはどうなるか
- 素材の納品範囲:完成データだけか、撮影した元素材も受け取れるか
- 公開後の修正:出演社員が退職した場合の差し替え費用はいくらか
見積書に出てこないのが著作権の扱いです。金額の比較だけで発注先を決めると、後から動画を編集し直せないことがあります。
費用を抑えるコツ
採用動画制作の費用は、撮影の回数と本数の設計で下げられます。公開されている費用相場の情報では、複数本をまとめて制作すると1本あたりの単価を下げられること、撮影日を1〜2日にまとめること、同じ場所で複数の企画を撮影することが挙げられています。企画構成を自社で作って持ち込めば、企画費の一部を圧縮できます。
もう1つ効くのが、撮影した素材の使い回しです。3分の社員インタビューを撮っておき、そこから30秒の縦型ショート動画を切り出せば、追加の撮影なしで本数を増やせます。ただしこの二次利用は、契約の書き方によってはできません。文化庁の「誰でもできる著作権契約マニュアル」は、著作権の全部を譲渡する場合、契約書に「著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む」と明記する必要があると説明しています。明記しない場合、二次的著作物に関する権利は譲渡の対象ではないと推定されるためです。既存の動画を編集し直して別の動画を作る行為は、この二次的著作物にあたります。
出典:「誰でもできる著作権契約マニュアル」(文化庁著作権課/令和4年度文化庁委託事業により改訂/マニュアルPDF・掲載ページ・2026年9月9日取得)
制作会社の選び方5つの基準
採用動画の制作会社は、映像のきれいさではなく採用の成果につながるかで選びます。問い合わせの段階で確認しておきたい5つの基準と、そのまま使える質問を整理しました。
| 基準 | 見るところ | 問い合わせ時の確認質問 |
|---|---|---|
| 採用領域の実績 | 採用動画そのものの制作本数と、業種の近さ | 「当社と同じ業種の新卒採用で、直近に制作された事例はありますか」 |
| 企画提案力 | 要望をそのまま形にするか、目的から構成を提案するか | 「この目的なら、どんな構成を提案されますか」 |
| 出口設計 | 完成後にどこで使うかまで一緒に考えるか | 「採用サイトと説明会とスカウトで、それぞれどう使い分けますか」 |
| 費用と品質のバランス | 見積もりの内訳が項目ごとに開示されるか | 「この金額の内訳と、削れる項目を教えてください」 |
| コミュニケーション | 窓口の一貫性と、修正依頼の伝わりやすさ | 「撮影後の修正は誰が窓口になり、何回まで対応されますか」 |
5つのうち見落とされやすいのは出口設計です。採用動画の費用は依頼先によって変わりますが、同じ金額でも成果が分かれるのはこの点だからです。動画は完成した時点では成果を生まず、どこに置くかで見られる回数が決まります。たとえばスカウトの返信後は、動画が効きやすい場面です。ABABAの実績では、スカウトの開封率は33%です(2026年1月時点)。開封の直後に文章だけで説明するか、短い動画を添えるかで、面談までの温度が変わります。誰に見せる動画かが定まっていない場合は、採用ペルソナの作り方から先に決めると、制作会社への依頼内容も固まります。
採用動画制作会社のタイプ別の選び方
採用動画を依頼できる相手は、大きく4つのタイプに分かれます。どのタイプにも向き不向きがあり、予算と社内の体制で選ぶ相手が変わります。
| タイプ | 特徴 | 得意な動画 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 総合映像制作会社 | 企画から撮影・編集まで一貫。演出の引き出しが多い | コンセプトムービー、会社紹介 | 採用ブランディングから設計したい |
| 採用領域に特化した制作会社 | 採用の文脈を理解しており、出口の設計まで相談できる | 社員インタビュー、座談会 | 採用の課題が具体的に決まっている |
| 動画制作のマッチング・クラウドソーシング | 複数社から見積もりを取って比較しやすい | 短尺のインタビュー、ショート動画 | 相場を確かめながら発注先を探したい |
| フリーランスの映像クリエイター | 費用を抑えやすく、小回りが利く | SNS向けショート動画、追加撮影 | 本数を継続的に増やしていきたい |
総合映像制作会社
総合映像制作会社は、企画から納品までを一社で完結できるタイプです。演出の選択肢が多く、コンセプトムービーのように構成そのものが品質を決める動画に向きます。一方で採用の事情は業種によって違うため、採用動画の制作事例があるかを事前に確認します。
採用領域に特化した制作会社
採用領域に特化した制作会社は、動画を作ることではなく採用の課題を解くことから話を始められるタイプです。母集団形成、志望度の醸成、辞退の防止といった目的ごとに、必要な尺や見せ方を提案してもらえます。求める成果が具体的に決まっている場合に選びやすいタイプです。
動画制作のマッチング・クラウドソーシング
マッチングやクラウドソーシングは、複数の見積もりを並べて比較できるタイプです。相場感をつかみたい段階や、1本目を小さく試したい場合に向きます。窓口が担当者ごとに変わることもあるため、修正のやりとりを誰が受けるかを最初に確認しておきます。
フリーランスの映像クリエイター
フリーランスの映像クリエイターは、費用を抑えながら本数を重ねたい場合に向くタイプです。SNS向けの縦型ショート動画のように、更新の頻度が成果につながる動画と相性がよくなります。一人で担当する分、撮影日程が埋まると次の制作まで間が空く点は見込んでおきます。
外注時の制作フロー
採用動画制作を外注する場合、依頼から納品までは7つの工程を踏みます。
- 依頼内容を整理する:目的、対象、公開場所、予算、公開時期を書き出す
- 制作会社を選定する:2〜3社に絞り、同じ条件で見積もりを依頼する
- ヒアリングを受ける:採用課題と、社内で使える既存素材を共有する
- 絵コンテを確認する:構成、出演者、撮影場所、尺を確定する
- 撮影する:出演者の日程を先に押さえる。最も調整に時間がかかる工程
- 初稿を確認して修正する:社内の確認者と回数を事前に決めておく
- 納品を受ける:元素材の受け取り範囲と著作権の帰属を契約で確認する
発注側が準備するのは、既存の会社案内や採用サイトの素材、出演候補者のリスト、撮影可能な日程と場所、社内の確認フローの4つです。このうち確認フローだけは発注前に決めておくと納期が縮みます。説明会で使う予定なら、会社説明会の資料に盛り込む情報と重複しない内容にしておくと当日の構成が組みやすくなります。
内製する場合の手順とおすすめのケース
採用動画は、スマートフォンの撮影と無料の編集ツールでも内製できます。手順は、目的を1つに絞る、出演者と質問を決める、明るい場所で外付けマイクを使って撮る、字幕を付けて編集する、置き場所を決めて公開する、の5つです。機材に予算をかけるなら、映像より先にマイクを優先します。
内製が向くのは、更新の頻度が成果につながる動画です。SNS向けの縦型ショート動画がその代表で、まだ自社を知らない学生に届ける段階では短い尺が見られています。株式会社moovyの調査では、まだ知らない企業の動画は「30秒以上〜1分未満」が43.8%で最も多く、志望度が高い企業では「1分以上」が42.0%で最多でした。認知の段階の短い動画を内製し、志望度を上げる長めの動画を外注する分担にすると、費用と本数の両方が成り立ちます。動画の型ごとの使い分けは「採用動画の効果と作り方|種類別の活用シーンと2026年のトレンドを解説」にまとめています。
出典:「採用動画トレンド調査2026」(株式会社moovy/2026年5月22〜29日調査・n=333/リリース・2026年9月9日取得)。調査主体は採用動画サービスの提供企業のため、方向性の参考として扱ってください。
採用動画制作でよくある失敗と対策
採用動画制作の失敗は、作る前と作った後に集中します。
- かっこよさが優先されて内容が伝わらない:対策は、絵コンテの段階で「この動画を見た学生が何を知った状態になるか」を1文で書き、制作会社と共有することです
- 目的が曖昧なまま発注する:認知も志望度も辞退防止もまとめて狙うと尺が伸びます。目的を1つに絞り、残りは別の動画に分けます
- 完成後の活用計画がない:納品されたまま採用サイトに置いて終わる例が少なくありません。発注前に置き場所を決めます
3つ目は特に起こりやすい失敗です。アルファノート株式会社の調査では、企業が挙げた活用シーンは採用サイト・採用特設ページと求人媒体がいずれも45.6%、会社説明会・採用イベントが44.3%でした。置き場所が複数あるほど1本あたりの費用対効果は上がります。
出典:「採用での企業ブランディング動画に関する実態調査(2026年版)」(アルファノート株式会社/2026年8月17〜18日調査・活用企業の人事担当者n=158/リリース・2026年9月9日取得)。調査主体は動画関連サービスの提供企業です。
よくある質問
採用動画制作の納期はどれくらいですか?
採用動画制作の納期を左右するのは撮影日数ではなく、出演者の日程調整と社内確認の回数です。企画の確定から撮影、初稿の修正、公開準備までの工程は、確認が何段階あるかで期間が変わります。誰がいつまでに確認するかを先に決めておくと短縮できます。
完成した採用動画の著作権は誰のものになりますか?
制作を依頼しただけでは、完成した動画の著作権は発注側に移りません。文化庁の「誰でもできる著作権契約マニュアル」は、契約で「完成した著作物の著作権は制作を依頼した側に帰属する」と合意しておく必要があると説明しています。また著作者人格権は譲渡の対象にならないため、著作権を譲り受けた側でも、著作者の了解なく動画を修正したり他社に修正を依頼したりはできません。
採用動画に出演する社員はどう選べばよいですか?
採用動画の出演社員は、社内評価の高さではなく、視聴者である学生との距離の近さで選びます。入社3年目までの社員や、応募が多い職種の担当者が候補です。出演は業務命令で決めず、公開範囲と掲載期間、退職時の扱いを本人と合意しておきます。
採用動画は内製と外注のどちらから始めるべきですか?
初めて採用動画を作る場合は、社員インタビューのように話す内容が主役になる型を内製し、社内の反応を見てから外注する進め方が現実的です。内製と外注のどちらか一方に決める必要はありません。
まとめ
採用動画制作で先に決めるのは、金額ではなく目的と置き場所です。目的が1つに絞られていれば必要な型と尺が決まり、相場表から予算の見当がつきます。制作会社を選ぶときは、映像のきれいさではなく採用領域の実績と出口設計で比べてください。そして契約では、著作権の帰属と二次利用の範囲を必ず確認します。ここを決めておくと、1回の撮影で作った素材を翌年以降も使い続けられます。
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