内定式のプログラムと目的|10月1日の根拠と、企業側の準備手順を解説

掲載日: 2026-08-19
内定式のプログラムと目的|10月1日の根拠と、企業側の準備手順を解説

内定式は、正式な内定を通知し、内定者に入社の意思を固めてもらうための場です。多くの企業が10月1日に実施しますが、この日付は法律で決まっているわけではありません。政府の就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議が毎年度決定し、経済団体等に要請している日程にもとづきます。同会議の資料は、この要請が企業の採用活動を法的に拘束するものではないことも明記しています。

そして、内定式をやれば内定辞退が止まるという前提は、いま成り立ちません。同じ関係省庁連絡会議の資料には、内定式に出席したあとで入社前に内定を辞退する事例や、複数の内定式に参加する事例があると書かれています。内定式は節目ではあっても、決着の場ではないという前提で設計する必要があります。

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内定式の目的は、内定者の意思を固めることにある

内定式の目的は、内定者に入社の意思を固めてもらうことにあります。そのために企業が内定式で得たいものは、次の3つに整理できます。

1つめは、正式な内定の通知と労働条件の確認です。内定通知書や内定証書を手渡し、勤務地や職種、初任給といった条件を書面で確認します。労働条件が曖昧なまま入社日を迎えると、入社直後のトラブルにつながります。

2つめは、内定者どうしの関係づくりです。内定式は、同期になる相手と初めて顔を合わせる場になります。入社後に相談できる相手がいるかどうかは、1年目の定着に直結します。

3つめは、会社への理解を深めてもらうことです。経営層から事業の方向性を直接聞く機会は、選考の途中ではなかなか作れません。

内定式のプログラムは、この3つのうち自社にとって何が最も足りていないかを決めてから組みます。3つとも1日に詰め込むと、どれも印象に残りません。

内定式が10月1日以降に行われる根拠

内定式が10月1日以降に行われる根拠は、政府が経済団体等に出している日程要請です。正式な内定日を卒業・修了年度の10月1日以降とするよう求めています。法律ではありません。

経団連の指針から政府の要請に変わっている

日程ルールの決め方は、2018年を境に変わっています。関係省庁連絡会議の資料には次のように記載されています。

「新卒一括採用」に対しては、2017年度まで日本経済団体連合会が「採用選考に関する指針」を策定していたが、採用活動の多様化等を踏まえ、2018年以降、政府において毎年度、関係省庁連絡会議を開催し、学生が学業に専念し、安心して就職活動に取り組める環境を作ることが重要である等の観点から、「就職・採用活動日程に関する考え方」を取りまとめ、就職・採用活動日程を決定し、経済団体等に要請を行っている。

現在の日程ルールは、この会議が毎年度決定しています。2027年度卒業・修了予定者については、令和7年12月26日決定の資料で次の3点が示されています。

区分時期
広報活動開始卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
採用選考活動開始卒業・修了年度の6月1日以降
正式な内定日卒業・修了年度の10月1日以降

(出典: 就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議「2027年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」

内定と内々定の法的な違いについては内定とは何か、内々定との違い内々定の扱いで整理しています。

この日程に法的拘束力はない

この日程要請に法的拘束力はありません。関係省庁連絡会議の資料が、要請の位置づけをはっきり書いています。

企業の採用活動は、本来企業自身による自由な経済活動の性格を有するものであり、本要請は、企業の採用活動を法的に拘束するものではないが、我が国の持続的な成長を支える若年人材を育成するため、学生が学業等に専念し、安心して就職活動に取り組める環境の実現を目指して行うものである。

10月1日を守らないと違法になる、という性質のものではありません。ただし要請に沿って運用する企業が多いため、10月1日を外すと内定者が他社の内定式と日程を比べる材料になります。日付を変える判断をするなら、内定者への説明をセットで用意します。

内定式のプログラム例と所要時間

内定式のプログラムを半日で組む場合、標準的な構成は次のとおりです。所要時間は内定者20名程度を想定しています。

進行所要時間の目安押さえる点
受付・開会15分交通費の精算方法をこの時点で案内する
経営層からの挨拶15分事業の方向性と、内定者に期待する役割を具体的に話す
内定証書の授与20分全員に手渡す場合は1人30秒で計算する
内定者の自己紹介30分1人1分に区切る。事前にお題を伝えておくと沈黙が減る
労働条件の確認と事務手続き30分提出書類の説明。その場で回収できるものは回収する
先輩社員との座談会45分内定者4〜5名に社員1名を配置する
今後のスケジュール説明15分入社日までの予定を一覧で配る
懇親会60〜90分参加は任意にする。飲酒を伴う場合は事前に意向を確認する

内定者どうしの交流に時間を割きたい場合の組み立ては内定者懇親会の設計で扱っています。

オンラインで実施する場合の変更点

内定式をオンラインで実施する場合、対面から変えるべき点は3つあります。遠方の内定者が多いときは検討する価値があります。

内定証書などの配布物は事前に郵送し、当日に開封してもらいます。到着確認まで含めて、開催の1週間前には手配を終えておきます。

自己紹介と座談会は、少人数のグループに分けます。20名が同じ画面にいる状態では発言が出ません。4〜5名のグループを作り、社員が1名ずつ入ります。

そして接続トラブルの窓口を、進行役とは別の担当者に持たせます。進行しながらの対応は無理があります。

内定式の準備手順とスケジュール

内定式の準備は、10月1日に実施するなら7月中に動き始めます。逆算した手順は次のとおりです

>7月中に、開催形式と日程を決めます。対面かオンラインか、半日か終日か、懇親会を伴うか。開催形式と日程が決まらないと、会場も予算も動きません。

8月上旬に、会場の確保と経営層のスケジュール押さえを済ませます。役員の予定は早い段階で埋まるため、スケジュール押さえを後回しにすると内容が制約されます。

8月下旬に、内定者へ案内を送ります。日時、場所、服装、持ち物、交通費の扱い、欠席時の連絡方法を書きます。出欠の締切は開催の3週間前に置きます。

9月中旬に、進行台本と配布物を仕上げます。内定証書の氏名は必ず複数人で確認します。誤字があると、その1点で場の印象が決まります。

9月下旬に、リハーサルを行います。オンラインの場合は接続テストを内定者にも案内します。

年間の並びの中での位置づけは内定者フォローの年間スケジュールを参照してください。

内定式で内定辞退は止まるのか

内定式を実施しても、内定辞退は止まりません。止まらない前提で設計するほうが、結果的に辞退は減ります。関係省庁連絡会議の資料は、内定式の位置づけについて次のように記しています。

さらに、採用活動を継続する学生にとって一定の節目となっていた内定式についても、複数の内定式に参加する事例や内定式出席後であっても入社前に内定を辞退する事例がある。

同じ関係省庁連絡会議の資料には、学生が就職活動を終えたと考えるタイミングについての調査結果も載っています。「内々定をもらった企業の中から就職先を決定したとき」と「志望度の高い企業から内々定をもらった時」を合わせて約6割である一方、「内定式に出た時・正式な内定通知を受けた時」は約1割弱にとどまるという内容です。学生の側では、内定式より前に意思決定が終わっているということになります。

ABABAの実績でも同じ傾向が出ています。内定を承諾したあとで辞退した割合は15.13%(25卒)でした。承諾を得た学生のうち、およそ6〜7人に1人が入社前に離れている計算です。内定式は、内定から入社までの半年前後の期間の途中にある1日にすぎません。

では企業は何をするか。学生の意思決定が内定式より前に終わっているなら、企業が手を打つ場所も内定式より前に移すことになります。内定から承諾までの時間が延びるほど、学生が他社の選考結果を待つ余地は広がります。

選考段階から接点を厚くした例として、髙松建設株式会社では、他社の最終選考まで進んだ学生に対して説明会をスキップし個人面談から選考を始める設計に変えています。担当者の鈴木さんは「もっと一人ひとりを大事にしないといけない」と述べ、早期からの関係づくりを重点に置いています(出典: ABABA導入事例 髙松建設株式会社)。

内定式そのものは、承諾済みの学生をつなぎとめる役割に絞ります。承諾後の期間をどう埋めるかは内定者研修の設計、入社後の定着までを含めた見方は新卒の早期離職で扱っています。

なお、関係省庁連絡会議の資料は、内定辞退を抑制するための「オワハラ」や「オヤカク」といった、学生の職業選択の自由を妨げる行為に留意が必要だと明記しています。辞退を止めたい局面ほど、企業はこの線を越えない設計にする必要があります。

内定式の費用をどう見積もるか

内定式の費用を会場費だけで見積もると、実際の支出とずれます。費目を分解すると次の6つになります。

費目内訳見積もりの単位
会場会議室、貸し会議室、社内スペースの設営1回あたり
内定者の交通費往復の実費、遠方者の宿泊費1人1回あたり×人数
配布物内定証書、記念品、資料の印刷1人あたり
懇親会飲食費、会場費1人あたり×人数
運営工数人事の企画、案内、当日運営、事後対応担当者の時間単価×投入時間
社員の稼働経営層と座談会に出る社員の当日拘束時間単価×人数×時間

6つのうち見落としやすいのは、運営工数と社員の稼働です。挨拶や座談会で社員が10名参加すれば、それだけで数十時間分の稼働が動きます。オンラインに切り替えると会場費と内定者の交通費は下がりますが、配布物の事前郵送の費用と手配工数が増えるため、単純な削減にはなりません。

内定者1人あたりの金額を出して、採用単価と並べます。内定式に採用単価の1割を超える金額をかけているなら、目的と内容が見合っているかを確認する目安になります。

内定式に関するよくある質問

内定式はなぜ10月1日なのですか?

政府の就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議が、正式な内定日を卒業・修了年度の10月1日以降とする日程を毎年度決定し、経済団体等に要請しているためです。2017年度までは日本経済団体連合会が指針を策定していましたが、2018年以降は政府が毎年度決定する形に変わっています。この要請に法的拘束力はないと同会議の資料に明記されています。

内定式で何をするのでしょうか?

内定式で行うのは、正式な内定の通知と内定証書の授与、労働条件の確認と事務手続き、経営層からの挨拶、内定者の自己紹介、先輩社員との座談会、懇親会が一般的な構成です。半日で組む場合、内定者20名程度で3時間半から4時間が目安になります。

内定式と入社式の違いは何ですか?

内定式は入社前に正式な内定を通知する場で、参加者はまだ従業員ではありません。入社式は入社日に行われ、参加者はその日から従業員になります。内定式で確認するのは入社の意思と労働条件、入社式で伝えるのは組織の一員としての役割です。

内定式を欠席した内定者にはどう対応すべきですか?

内定式を欠席した内定者には、理由を問い詰めず、別日に個別面談の機会を用意します。学業や体調が理由であれば問題ありませんが、他社の選考が続いている場合もあります。いずれにせよ、欠席を理由に不利益な扱いをすることは避けます。内定式後も辞退が起きる前提に立てば、欠席者こそ個別に接点を持つ価値があります。

内定式は、内定者の意思決定を確認する場であって、決めさせる場ではありません。学生の意思決定は内定式より前に終わっていることが多く、動かせるのは承諾までの接点の設計です。選考段階からの打ち手はABABAまるわかり資料にまとめています。

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