通年採用は、一括採用をやめて年中ずっと選考を回す方式だと受け取られがちです。実際に企業が運用している形は、一括採用の流れを残したまま、後半戦に採用枠の一部を意図的に空けておく設計が中心になります。判断に必要なのは3つ。日程ルールがいまどうなっているか、自社が向いているか、工数がどれだけ増えるか。政府の一次資料と実際の運用例をもとに整理します。
通年採用とは、卒業年度で募集を締めない採用の進め方
通年採用とは、新卒の募集と選考を特定の時期に集中させず、年間を通じて応募の窓を開けておく採用の進め方です。一括採用が3月広報・6月選考・10月内定という1本の流れで動くのに対して、通年採用は入口を複数の時期に配置します。
対象者の幅も変わります。国内の3月卒業予定者に加えて、9月卒業の留学生、大学院の修了予定者、卒業から数年以内の既卒者まで、同じ枠で受けられるようになります。
| 比較項目 | 新卒一括採用 | 通年採用 |
|---|---|---|
| 募集の時期 | 卒業前年度の3月からの数か月に集中 | 年間を通じて複数の入口 |
| 対象者 | 3月卒業予定者が中心 | 3月卒業予定者、9月卒業の留学生、大学院修了予定者、既卒者 |
| 選考の運営 | 同じ選考を同時期に大量に回す | 少人数の選考を継続的に回す |
| 内定を出す時期 | 10月1日に向けて揃える | 決まった順に個別に出す |
| 母集団の作り方 | 就職情報サイトとイベントで一括して集める | 通年で接触できるチャネルを常設する |
一括採用の型そのものを確認したい場合は、新卒一括採用の仕組みとメリット・デメリットにまとめています。
一括採用の枠が埋まらない前提で後半戦を設計する手順は、「逆転の採用戦略」完全ガイド(無料)に事例つきでまとめています。
通年採用の前提になる日程ルールは、政府が毎年度要請している
通年採用を検討するとき最初に確認すべき前提は、いまの日程ルールを誰が決めているかです。2017年度までは日本経済団体連合会が「採用選考に関する指針」を策定していましたが、2018年以降は政府が毎年度、就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議を開催して日程を決定し、経済団体等へ要請しています(就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議「2027年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」令和7年12月26日)。
同じ資料には、要請の位置づけがこう書かれています。「企業の採用活動は、本来企業自身による自由な経済活動の性格を有するものであり、本要請は、企業の採用活動を法的に拘束するものではない」。日程は広報活動3月1日以降、採用選考活動6月1日以降、正式な内定日10月1日以降が原則とされ、この枠組みは2017年度の卒業生以降変更されていません。
ここから2つのことが決まります。通年採用は法令上の許可を必要とする制度ではありません。同時に、「就活ルールが廃止されたから通年採用ができるようになった」という理解も現状とは合っていません。廃止されたのは経団連の指針であって、日程ルール自体は政府の要請として毎年度出ています。
同じ資料は、2028年度(2029年3月)以降の卒業・修了予定者について、日程ルールの在り方の見直しの検討を進めるとも述べています。通年採用の可否を指針の有無で判断すると、この見直しのたびに方針が揺れます。判断の軸は自社の運営体力に置くほうが安定します。年度ごとの日程は新卒採用の全体スケジュールで確認できます。
通年採用を検討する企業が増える理由は、一括採用で枠が埋まらないこと
通年採用の検討が増えている直接の理由は、一括採用の期間内に採用予定数が埋まらない企業が多数になったことです。同じ関係省庁連絡会議の資料に、判断材料になる実測値が並んでいます。
- 企業が採用予定数を充足できたとする割合は近年減少し、直近(2025年卒)では3割台にとどまる
- 充足できなかった理由として「選考応募者が予定より少ない」「内定辞退が予定より多かった」が挙げられている
- 学生は4月までに累計で約9割が採用面接を受け、約7割が内々定を得ている
- 就職・採用活動に9カ月間程度以上を要している学生の割合は、令和2年度の約3割から令和6年度の約5割へ増加している
- 中小企業においては、内定が本来出るべき10月1日の時点で必要な内定者数を確保できていない状況も見られる
この5点が意味するのは、選考の解禁時期を守って動く企業ほど、6月に選考を始めた時点で候補者の7割が既に内々定を持っている状態に置かれるということです。10月に枠が余る企業にとって、通年採用は制度の刷新ではなく、埋まらなかった枠を回収する手段になります。
一方で、学生側の活動が長期化しているという事実は、後半にも候補者が残っていることを示します。同じ資料は、学生が就職活動を終えたと考えるタイミングとして「内々定をもらった企業の中から就職先を決定したとき」と「志望度の高い企業から内々定をもらった時」が合わせて約6割を占め、「内定式に出た時・正式な内定通知を受けた時」は約1割弱に過ぎないと報告しています。内々定を持っている学生と、就職先を決めた学生は別だという前提が、後半戦の設計の出発点になります。
通年採用が向いている企業と、先に別の手を打つべき企業
通年採用が向いているかどうかは、採用予定数を充足できない原因がどこにあるかで決まります。母集団が足りないのか、選考で落としすぎているのか、内定を出しても承諾されないのか。原因が違えば、窓を開け続けても結果は変わりません。
| 自社の状況 | 通年採用が効くか | 先に打つべき手 |
|---|---|---|
| 10月時点で採用枠が余っている | 効く(余った枠の回収に直結する) | — |
| 応募は集まるが選考で落としきっている | 効かない | 評価基準の見直し。窓を増やすと選考工数だけ増える |
| 内定は出せるが承諾されない | 部分的 | 内定から承諾までの設計 |
| 採用担当が1〜2名で兼務している | 部分導入なら可 | 全面通年にせず、窓を1つだけ増やす |
| 選考の判断を現場に依頼している | 効く(少人数の選考を継続的に回せる) | — |
| 9月卒業の留学生・既卒者を採る予定がある | 効く(一括の枠では受けられない) | — |
| 内定者研修や入社時期が年1回に固定されている | 部分的 | 入社月を複数持てるかを人事制度側で確認する |
選考で落としきっている企業と、承諾されない企業が通年採用を始めると、内定を出す数と辞退される数が同時に増えます。手法の選び方そのものを整理したい場合は採用手法10選の比較を参照してください。
通年採用の費用と工数は、4つの構成要素に分けて試算する
通年採用の費用と工数は、総額で見積もると判断できません。増えるのは母集団づくりの費用だけではなく、選考の運営工数と、受け入れ側の準備工数も動きます。自社の数字を入れて試算できる形に分解します。
| 構成要素 | 通年化で何が増えるか | 自社の数字を入れる欄 |
|---|---|---|
| 母集団づくりの費用 | 通年で接触できるチャネルの年額。掲載期間を区切る媒体を使う場合は、後半戦の期間分が追加になる | 年額( )円 |
| 選考の運営工数 | 少人数の選考を繰り返す回数。日程調整と面接官の確保が、回数分だけ発生する | 1名採用あたり( )時間 |
| 内定者フォローの期間 | 内定を出す時期が分散するため、フォロー期間の長さが個人ごとに変わる | 最長( )か月 |
| 受け入れ側の準備 | 入社月が複数になる場合、研修と配属の準備が回数分必要になる | 年( )回 |
試算は3つの順で進めます。まず後半戦に残す枠の人数を決めます。次にその人数を採るのに必要な選考回数を、自社の通過率から逆算します。最後に母集団づくりの費用・選考の運営工数・内定者フォローの期間・受け入れ側の準備の4つの増分を足して、1名あたりの単価に割ります。
単価が一括採用の1.5倍を超える見込みになった場合、全面通年ではなく窓を1つ増やす形に縮めるほうが現実的です。費用の内訳の考え方は新卒採用コストの内訳にまとめています。
通年採用は、一括採用の枠を残したまま始められる
通年採用は、一括採用を止めずに部分的に始められます。実際に運用されている形は、一括採用で大半を採りながら、後半戦に一定の枠を空けておく設計です。決めることは3つだけです。
残す枠を何名にするか
残す枠の人数は、過去2年の10月1日時点の未充足人数を目安に置きます。前年に3名足りなかった企業が、翌年に10名分の通年枠を用意する必要はありません。枠を大きく取ると、一括採用側の内定判断が甘くなるという副作用が出ます。枠の決め方は採用計画の立て方の人数設計と揃えておくと、予算の申請時に説明が通りやすくなります。
窓をいつ開けるか
窓を開ける時期は、一括採用の選考が一巡した直後に置きます。多くの企業では、内定出しが落ち着く6月から7月がその時期にあたります。10月1日を過ぎてから慌てて動き始めると、母集団の確保と選考と内定者フォローが同時に走ります。単発の追加募集として動く場合の進め方は新卒追加募集・二次募集の進め方にまとめています。
誰が回すか
後半戦の選考を回す担当は、一括採用の担当と分けるか、時期をずらすかのどちらかにします。同じ担当者が同じ月に両方を持つと、動きが遅れるのは後半戦の側です。面接官の確保も先に決めます。少人数の選考を継続的に回すため、日程を固定して枠を確保しておく形が運用しやすくなります。
通年採用で後半に出会う学生は、選考が進んだ状態で来る
後半戦に出会う学生は、就職活動を始めた段階の学生とは状態が違います。他社の選考をいくつも通過し、自分が何を重視するのかを言葉にできる状態で来ます。この違いは、選考にかかる工数と、内定から承諾までの期間に表れます。
ABABAの実績では、他社の最終面接まで進んだ学生にスカウトを送る形をとった場合、内定承諾率は62.4%(26卒)、内定から承諾までの期間は平均10日間でした(自社実績・2026年1月時点)。候補者側の検討が進んだ状態から話が始まるため、判断までの時間が短くなります。承諾率そのものの見方は内定承諾率の見方と上げ方を参照してください。
後半戦に強い採用を継続している例が、ベイシス株式会社です。同社は通信インフラ業界の働き方と自社のカルチャーの両方に合う人材の母数が限られるという課題を持ち、毎年コンスタントに数名を採用する運用を公開しています。担当者は「学生が就活をある程度進めてきて『何か違うかもしれないな』と思う時期に、新たな候補に入ることが実は多い」と述べており、他のチャネルと比べて採用単価を抑えられている点も挙げています(導入事例)。
後半戦の枠を残す設計と、そこに当てるチャネルの選び方は「逆転の採用戦略」完全ガイド(無料)で事例つきに整理しています。自社の採用にどう当てはまるかを直接確認したい場合は、ABABAのサービス概要から資料をダウンロードできます。
通年採用に関するよくある質問
通年採用とは何ですか?
通年採用とは、新卒の募集と選考を特定の時期に集中させず、年間を通じて応募の窓を開けておく採用の進め方です。3月卒業予定者だけでなく、9月卒業の留学生や大学院の修了予定者、既卒者も同じ枠で受けられる点が一括採用との違いになります。
通年型採用とは何ですか?
通年型採用は、通年採用と同じ意味で使われる言い方です。年間を通じて採用活動を継続する形を指し、企業によって「通年採用」「通年型採用」「随時採用」と呼び方が分かれますが、運用の中身に決まった違いはありません。
通年採用にすると内定辞退は減りますか?
通年採用そのものに内定辞退を減らす効果はありません。辞退が起きているのは内定から承諾までの段であり、窓を増やしても内定を出す数と辞退される数が同時に増えるだけです。承諾されない状態が続いている場合は、内定から承諾までの期間に渡す情報の量を先に見直します。
通年採用は中小企業でも運用できますか?
通年採用は中小企業でも運用できますが、全面通年ではなく窓を1つ増やす形から始めるのが現実的です。関係省庁連絡会議の資料でも、中小企業では10月1日の時点で必要な内定者数を確保できていない状況が指摘されており、余った枠の回収という目的に絞れば少人数の体制でも回せます。採用担当が1〜2名の場合は、後半戦の選考日程を先に固定してから窓を開けます。



