内定とは?内々定や採用との違い、通知書の記載例と手続きの流れを解説

内定とは?内々定や採用との違い、通知書の記載例と手続きの流れを解説

内定は単なる「合格通知」ではなく、企業と候補者の間で労働契約が成立する重要な法的行為です。しかし実務では、内々定や採用との違い、通知書の記載内容、辞退や取り消しの可否など、正確に理解しないまま運用されているケースも少なくなく、トラブルに発展してしまうこともあります。

本記事では、内定の法的性質から通知書の具体例、入社までの手続き、辞退・取り消しの要件までを体系的に整理します。トラブルを防ぎ、安定した採用活動を実現するための基礎知識を解説していきます。

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内定とは何か

  • 内定とは:企業が採用の意思を示し、応募者も入社意思を承諾した結果、入社を前提に双方が合意した状態です。
  • 法的効力:一般に、承諾が成立した時点で労働契約が成立し、企業の一方的な取り消しは厳しく制限されます。(運用上は通知書等で合意内容を証拠化します。)
  • 法的性質(始期付解約権留保付労働契約):入社日という「開始時期(始期)」が定められ、一定の合理的理由がある場合に限り企業側に「解約(取り消し)できる余地」を留保した労働契約、という意味です。

内定制度の目的

内定制度の目的は、将来の入社を前提に企業と求職者双方が計画的に準備を進めるための期間を確保する点にあります。

企業側にとっては、入社予定者を確定させることで人員配置や配属計画、研修設計、備品手配、労務手続きの段取りなどを具体化でき、採用活動を戦略的に締めくくることができます。

一方、求職者にとっても入社の見通しが立つことで就職活動を終了し、生活基盤の整備や必要資格の取得、現職の退職準備などに専念できるというメリットがあります。

こうした準備期間を設けることで、入社後のミスマッチや手続き上の混乱を防ぎ、円滑な雇用開始につなげる役割を果たします。

内定の法的性質

「内定」は、最高裁昭和54年7月20日判決により「始期付解約権留保付労働契約」と位置づけられています。

これは、企業が採用の意思を示し、応募者が承諾した時点で労働契約が成立する一方、実際の就労開始日は将来の入社日(始期)とされている契約形態を指します。したがって、内定は単なる採用予定の通知ではなく、法的拘束力を伴う契約です。

また「解約権留保付」とは、企業が一定の条件のもとで内定を取り消す権利を留保していることを意味しますが、その行使は無制限ではありません。判例は、内定当時に知り得なかった重大な事実があり、かつ社会通念上相当と認められる場合に限り、取り消しが有効としています。

企業側は、この厳格な要件を踏まえた上で内定を出す必要があります。

内定通知書について

内定通知書は、内定の成立内容を明確にし、後々のトラブルを防ぐためにとても重要な書面です。主な役割は以下のとおりです。

  • 内定の事実と条件を明示する
  • 入社日や雇用条件を確認する
  • 承諾期限や問い合わせ先を示す

内定通知書は法的に発行が義務付けられているわけではありませんが、合意内容を証拠として残す実務上の意義は大きく、企業・内定者双方の認識の齟齬を防ぐ役割を果たします。

記載事項と記載例

内定通知書には、内定の事実と条件を明確に示すため、以下の項目を記載することが望まれます。

  1. 内定の旨
  2. 入社予定日
  3. 雇用条件(職種・勤務地・賃金・労働時間など)
  4. 内定承諾書の提出期限
  5. 内定取り消しに関する留意事項
  6. 問い合わせ先

特に雇用条件は、後のトラブル防止の観点から具体的に記載することが重要です。

項目記載例
内定の旨「貴殿を〇年〇月〇日付で採用内定といたします。」
入社日「入社予定日:2027年4月1日」
雇用条件「配属:営業部/基本給25万円/試用期間3カ月」
承諾期限「〇月〇日までに承諾書をご返送ください。」
問い合わせ先「人事部〇〇(TEL・メール)」

内々定との違いとは

  • 内定:企業と応募者双方の合意により労働契約が成立している状態。法的拘束力が生じ、原則として一方的な取り消しは制限される。
  • 内々定:将来内定を出す予定であることを示す意思表示。労働契約は未成立で、法的拘束力は限定的。

両者の本質的な違いは、労働契約が成立しているか否かにあります。以下で具体的に説明していきます。

内々定とは?内定との違いや取り消しの問題点・対処法を解説

通知時期の違い

内定と内々定は混同されやすいですが、明確な違いがあり、その1つが通知される時期です。

新卒採用では、政府が学業への配慮と就職活動の秩序維持を目的として、正式な内定日を「卒業・修了年度の10月1日以降」とするよう企業に要請しています。そのため、多くの企業は10月1日以降に内定を出します。一方、企業は優秀な人材を早期に確保したいという事情もあり、選考自体は大学3年生の6月頃から本格化し、夏前後に「内々定」として採用の意思を示すケースが一般的です。

内々定はあくまで正式内定前の段階であり、10月の内定通知とは法的効力や位置付けが異なります。このように、6月前後の内々定と10月以降の内定という時期の差は、政府要請と企業の採用戦略の双方を背景に生じています。

他にも内定と内々定には以下のような違いがあります。

法的効力の違い

内定と内々定の最大の違いは、法的拘束力の有無にあります。

内定は、企業と応募者双方の承諾によって労働契約が成立した状態であり、「始期付解約権留保付労働契約」として法的効力を持ちます。そのため、企業側が一方的に取り消す場合は、客観的合理性と社会通念上の相当性が必要であり、不当と判断されれば無効となる可能性があります。場合によっては、内定者から損害賠償を請求されるリスクも生じます。

一方で、内々定は正式な労働契約が成立していない段階の採用意思表示にとどまるため、法的拘束力は原則として発生しません。企業・応募者いずれも比較的自由に撤回が可能ですが、社会的信用や企業ブランドへの影響を踏まえれば、安易な取り消しは望ましくありません。

このように、内定は法的責任を伴う契約であるのに対し、内々定は契約前段階の合意にすぎない点が本質的な違いです。

採用との違いとは

内定と採用も似た意味の言葉ですが、この2つの違いは契約の成立有無にあります。

  • 採用:企業が選考結果として合格を通知した段階。企業側の意思表示にとどまり、応募者の承諾前であれば労働契約は未成立。
  • 内定:企業の採用意思に対し、応募者が入社意思を示し双方が合意した状態。労働契約が成立している。

つまり、採用は「選考段階の合格通知」、内定は「契約段階での合意成立」という点が本質的な違いです。

労働契約成立のタイミング

採用通知から内定承諾に際し、労働契約が成立するタイミングについてご説明します。

上述した通り、採用通知は、企業が応募者に対して合格の意思を示す一方的な通知にすぎず、この段階では契約はまだ成立していません。通知を受けた応募者が入社の意思を明確に示し、企業がこれを受け入れた時点で双方の合意が成立し、労働契約が成立します。

実務上は、採用通知後に内定承諾書の提出や承諾の意思表示がなされ、その時点で「内定」となり契約関係が確定します。つまりこの時点で企業は使用者としての法的義務を負い、応募者は労働者として契約上の地位を取得する、という点が重要です。

内定決定後の主な流れ

内定決定後から入社までの一般的な流れは次のとおりです。

  • 企業が内定通知書を交付し、内定者が承諾の意思を表明
  • 労働条件通知書の交付および必要に応じて雇用契約書を締結
  • 内定式や説明会の実施(任意)
  • 内定者が必要書類(年金番号・口座情報など)を提出
  • 入社日を迎え、社会保険等の手続きを実施

企業は法令に基づく条件明示や受入準備を進め、内定者は意思確認と必要書類の提出を行うなど、双方が計画的に手続きを進めることが重要です。

内定式・説明会

内定式や内定者向け説明会は、入社前に企業理解と帰属意識を高めるための機会です。主に新卒採用で実施され、内定解禁日である10月1日以降に行われることが一般的です。具体的な内容は、内定証書の授与、経営層からのメッセージ、今後のスケジュール説明、労働条件の確認、内定者同士の交流会などが中心となります。

内定式や内定者向け説明会の目的は、入社前の不安解消と志望度の維持・向上、早期離職の防止、企業理念の浸透にあります。一方的な情報提供に終始せず、双方向のコミュニケーション設計を意識することが重要です。

また、労働条件や配属に関する説明は曖昧さを残さず明確に行い、後のトラブル防止につなげる必要があります。単なる儀式ではなく、内定辞退抑止とエンゲージメント向上の機会として戦略的に設計することが求められます。

内定後のフォロー体制は辞退防止と入社意欲の維持に直結します。特に、LINEを活用した内定者フォローの可否や運用方法については、別記事で詳しく解説しています。

内定者フォローでLINEを使うメリット・デメリット・挨拶の仕方などを紹介

労働条件通知書の交付

労働条件通知書は、労働基準法第15条に基づき、使用者が労働契約の締結に際して労働者に交付することが義務付けられている書面です。内定段階で契約が成立していても、入社時までに書面での明示が必要となります。

雇用契約書が当事者双方の合意内容を記載し、署名押印する契約書であるのに対し、労働条件通知書は使用者が一方的に条件を明示する法定文書という点で違いがあります。

記載必須項目には、契約期間、就業場所・業務内容、始業終業時刻、賃金、退職に関する事項などが含まれ、書面または本人が希望する方法での交付が求められます。

内定辞退の注意点

  • 内定は労働契約に当たり、期間の定めのない契約であれば民法627条により原則2週間前の申入れで解約が可能
  • 法的には辞退できるが、入社直前の辞退は企業の採用計画に大きな影響を与える
  • 回答期限内に、できるだけ早く誠実に連絡することが重要
  • 電話を基本とし、感謝とお詫びを伝えるなど社会人としての配慮を忘れない

辞退の要件と通知期間

内定は「始期付解約権留保付労働契約」と位置付けられているため、辞退は契約の解約にあたります。

期間の定めのない雇用(無期雇用)の場合、民法627条1項により、原則として解約の申入れから2週間経過すれば契約は終了します。したがって、入社日の2週間前までに辞退の意思を明確に通知することが基本です。

一方、有期雇用の場合は民法628条が適用され、原則として「やむを得ない事由」が必要とされます。ただし、入社前の段階では実務上柔軟に扱われる傾向もあります。いずれにせよ、口頭連絡に加え記録が残る形で通知し、企業の採用計画に配慮した早期対応が重要です。

適切な連絡方法とマナー

内定辞退を伝える際は、まず迅速かつ誠実な対応を心がけることが基本です。原則として電話で直接連絡し、担当者に口頭で意思を伝えるのが望ましい方法です。

電話では、内定への感謝を述べたうえで、辞退の意思を明確に伝え、選考や準備に時間を割いてもらったことへの謝意とお詫びを丁寧に示します。始業直後や終業間際、昼休みの時間帯は避けるなどの配慮も必要です。

電話後は、内容を補足するためにメールで正式に辞退の旨を送ると記録が残り、双方にとって安心です。理由については「一身上の都合」や「慎重に検討した結果」など簡潔で差し支えない表現で足ります。過度に詳細な説明や他社名の明示は避け、最後まで礼節を保つことが将来的な関係性への配慮にもつながります。

内定取り消しについて

内定取り消しは、労働契約の解約に当たるため厳格に制限されます。

  • 内定は「解約権留保付労働契約」であり、企業に一定の解約権が留保されている
  • ただし行使には客観的合理性と社会的相当性が必要
  • 内定当時に予見できなかった重大事由であることが条件

解約権留保とは、入社前に一定の場合のみ契約を解除できる権利を指しますが、能力不足や印象の変化といった理由では原則として認められません。

取り消しが認められるパターン

内定取り消しが有効とされるのは、最高裁昭和54年7月20日判決が示した要件を満たす場合に限られます。

  1. 内定当時には企業が知ることができず、かつ知ることを期待できなかった事実であること
  2. その事実に基づく取り消しが客観的に合理的で、社会通念上相当と認められること

この両方を満たしている必要があります。

具体例としては、重大な経歴詐称(学歴・職歴・資格の虚偽申告)、業務遂行が困難となる重大な健康上の問題の発覚、内定後の犯罪行為や社会的信用を著しく損なう行為などが挙げられます。また、会社の責に帰さない急激な経営悪化により、整理解雇の要件を満たす場合も認められる可能性があります。

一方で、面接時の印象との差異や期待水準未達といった事情は、原則として正当理由には該当しません。あくまで企業が内定前の段階で十分な審査を尽くしていることが前提となります。

取り消しが認められないパターン

内定取り消しは解雇に準じて厳しく制限されるため、客観的合理性と社会的相当性を欠く場合は無効と判断されます。この典型例が、内定者の性格や能力に関する主観的評価です。

最高裁昭和54年7月20日判決では、面接時から把握できたはずの性格面を理由に内定を取り消した事案について、企業側の調査不足を指摘し、解約権の濫用として無効と判断しました。

また、「期待した能力水準に達していない」「社風に合わないと感じた」といった抽象的理由も認められません。さらに、軽微な業績悪化や人件費調整目的の取り消しも、整理解雇の厳格な要件を満たさない限り無効となります。

企業が内定時点で予見できた事情や、合理的な経営努力を尽くしていない場合には、取り消しは許されない点に留意が必要です。

まとめ

本記事では、内定の基本概念から内々定・採用との違い、通知書の記載事項、入社までの手続き、辞退・取り消しの法的要件までを体系的に整理しました。

内定は労働契約が成立する重要な法的行為であり、企業には慎重な人選と適切な手続きが求められます。通知書の明確化や条件提示、内定者フォローの充実は、辞退の防止やトラブル回避に直結します。法的理解を踏まえた実務対応を心がけ、安定した採用活動を実現しましょう。

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